書斎から出てきた藤崎千颯は、リビングに着くとちょうどその一言を耳にして、目を丸くして今井律を見つめ、そして工藤みやびを見た。
荒木雅、学校に行って数日で、もう浮気か?
しかも浮気相手は他でもない、幼い頃から見て育った今井律だ。
兄が激怒すると思っていたが、意外にも彼の表情は穏やかで、ただ軽く顔を工藤みやびの方に向けただけだった。
「そうなの?」
「違うわ」工藤みやびも同じく平然とした顔で答えた。
今井律は彼女が二人の関係を否定するのを見て、続けて言った。「彼女は中学三年生の時から一年間ずっと僕にラブレターを書いていたし、僕のために栄誠中学校に転校してきたんだ」
藤崎千颯はそれを聞いて、何かを思い出したように言った。「なるほど、あの年の君の誕生日会で受け取った手作りのハートチョコレートと、藤崎の三の若様が読み上げたラブレター、彼女が書いたものだったんだな」