藤崎千颯は今井律の肩に手を置いて軽く叩き、彼がまだ言おうとしていた言葉を遮った。
「時間も遅いし、行こうか」
今井律は不満そうに藤崎雪哉の隣に座っている少女を見つめ、体の横に垂らした手をきつく握りしめた。
もしこの男が他の誰かだったら、彼女を取り戻せるかもしれない。だがこの人は他でもない藤崎雪哉、彼が生涯かなわないと思っていた藤崎雪哉だった。
藤崎千颯はほとんど無理やり彼を引っ張って外に出し、ドアを出ると胸をなでおろしながらつぶやいた。
「びっくりした。本当に二人が関係あるのかと思った」
「雅は俺のことが好きだったんだ!」今井律は厳かに宣言した。
彼女はずっと彼のことを好きだった。ただ何があったのか、突然彼のことを好きではなくなってしまった。
彼女が交通事故で退院した後、彼はずっと彼女を探していた。しかし帝都中を探し回っても、彼女を見つけることができなかった。