工藤みやびは彼だと疑っていたが、証拠がなかった。
藤崎千颯は彼だと知っていたが、言う勇気がなかった。
数学の補習クラスは受けられなくなったが、藤崎雪哉は願い通り彼女の数学指導教師を続けることになった。
毎日放課後、自分で他の科目を復習するか、藤崎雪哉が時間のある時に数学を教えてもらうかで、あっという間に半月が過ぎた。
ある日の午後、授業が終わるとすぐに鈴木紀子が走ってきて彼女の腕を抱きしめた。
「天才、来週芸術の試験があるの、助けて。」
「わかったわ、まずはどれくらい練習できているか見てみましょう。」工藤みやびはうなずき、彼女と一緒に西村千晴と合流した。
二人は順番に芸術試験で抜き打ちチェックされる5曲を弾いてみせた。西村千晴は問題なかったが、鈴木紀子はリズムをうまく掴めていなかった。