第105章 藤崎夫人と彼女、あなたが選びなさい

「……」

工藤みやびは証拠を見て、ぼんやりと瞬きをした。

ふと思い出した。一昨日帰宅した時、藤崎千颯にぶつかって、部屋に戻って服を着替えたら、ポケットのレシートを忘れていた。

どうやら、妊娠検査薬は処分したものの、やはり見落としがあって彼らに発見されてしまったようだ。

「私がそれを買ったからって、妊娠しているとは限らないわ」

「君は一ヶ月以上生理が来ていない」と藤崎雪哉は言った。

工藤みやびは歯ぎしりした。彼がそこまで詳しく知っているなんて。

「生理不順なだけよ」

藤崎雪哉は時間を確認した。「あと2分だ」

「本当に妊娠してないわ。信じないなら、今すぐ病院に行って検査しましょう」

どうせ、もうこの役所の前にいたくなかった。

藤崎雪哉の目には波風一つなく、「手続きが終わってから行こう」