工藤みやびはようやく緊張から解放されたと思った矢先、また心臓が高鳴った。
「せっかく来たんだから、結婚しちゃえばいいじゃないか。わざわざ役所の人に連絡して、お前たちのために遅くまで待ってもらったのに、今さら結婚しないなんて、申し訳が立つのか?」
藤崎千颯は不満げだった。自分は午後ずっと忙しく走り回っていたが、それは彼らの結婚のためだったのだ。
今、荒木雅が可哀想な顔をして結婚しないと言い、彼の心が軟化して本当に結婚しないことになった。
「車を出せ」藤崎雪哉は低い声で急かした。
結婚の決断は、彼があまりにも自分勝手に自分のことだけを考え、彼女の気持ちを十分に考慮していなかった。
彼女の両親はあのような極めて失敗した結婚生活を送り、彼女もその結婚のせいで深く傷ついていた。