第113章 便宜な裏取引

数日間の模擬試験の後、鈴木紀子と西村千晴は帝都音楽学校の芸術試験に参加することになった。

鈴木紀子は自信がなかったため、泣きながら工藤みやびに付き添いと応援を頼み込んだ。

みやびは二人の音楽学院の芸術試験に付き添った後、すぐに自分の帝都映画学院の試験が控えていた。

一次試験、二次試験、三次試験と丸一週間かかり、やっと家に帰って一日休んだところで、以前彼女と契約を結んだ石橋林人から電話がかかってきた。

「荒木雅、明日の午前十時に『長風』のオーディションだ。」

「はい、明日時間通りに行きます。」

「小倉穂という役は好感度が高くないけれど、有名な監督の作品だし、オーディションに参加する人も少なくない。この役を獲得できるかどうかは君の実力次第だ。」

「必ず獲得します。」工藤みやびは言った。石橋の口ぶりからすると、彼女が藤崎家に住んでいることを知らないようだった。