第122章 彼女の愛情弁当

昼、もうすぐ1時になろうとしていた。

藤崎雪哉はまだ幹部たちと会議中で、ウィル株式会社との提携後の重要プロジェクト計画について協議していた。

皆、空腹で頭がくらくらしていたが、誰も声を上げる勇気はなかった。

ようやく、藤崎雪哉の携帯が鳴り、彼は会議を一時中断して電話に出た。

「昨夜、食べ物を用意しておいたけど、朝出かける時に持って行った?」

「うん、持っていったよ」藤崎雪哉は優しい声で答えた。

ほっとしかけていた幹部たちは、電話に出る社長を驚愕の表情で見つめた。

さっきまで会議では冷たい表情だったのに、電話に出ると表情も声も変わっていた。

この3月の春風のような優しい口調は、さっきの会議での声とは天と地ほどの違いがあった。

もしかして、電話をかけてきたのは、噂の社長の謎めいた彼女なのだろうか?