第122章 彼女の愛情弁当

昼、もうすぐ1時になろうとしていた。

藤崎雪哉はまだ幹部たちと会議中で、ウィル株式会社との提携後の重要プロジェクト計画について協議していた。

皆、空腹で頭がくらくらしていたが、誰も声を上げる勇気はなかった。

ようやく、藤崎雪哉の携帯が鳴り、彼は会議を一時中断して電話に出た。

「昨夜、食べ物を用意しておいたけど、朝出かける時に持って行った?」

「うん、持っていったよ」藤崎雪哉は優しい声で答えた。

ほっとしかけていた幹部たちは、電話に出る社長を驚愕の表情で見つめた。

さっきまで会議では冷たい表情だったのに、電話に出ると表情も声も変わっていた。

この3月の春風のような優しい口調は、さっきの会議での声とは天と地ほどの違いがあった。

もしかして、電話をかけてきたのは、噂の社長の謎めいた彼女なのだろうか?

……

「それで、食べた?」工藤みやびは尋ねた。心配で電話をかけたのだ。

「……今から食べるところだ」藤崎雪哉は少し心虚になった。

「胃薬も忘れずにもう一度飲んでね」工藤みやびは念を押した。

やはり誰かが言わないと、彼はまた食事と薬を忘れてしまう。

「わかった」藤崎雪哉は笑顔で答え、続けて尋ねた。「君は?食事した?」

「今食べてるところ」工藤みやびは言ってから、真剣な口調でもう一度言った。「今何をしていても、まず薬と食事を済ませて」

「わかったよ、午後は早く帰るから」藤崎雪哉は苦笑いして、電話を切った。

幹部たちは、いつも無愛想な社長が甘い笑顔を浮かべているのを呆然と見つめ、自分の目を疑った。

藤崎雪哉は時計を見て、「まず昼食を取りましょう。30分後に再開します」と言った。

休憩時間が短いため、昼食はアシスタントたちが直接オフィスに届け、早く食べて早く会議と仕事を再開できるようにしていた。

皆、空腹に耐えられず、急いで弁当箱を開けて食べ始めた。

岡崎謙が紙袋を持って入ってきて、ピンク色のハローキティ柄のお弁当箱と胃薬の箱を藤崎雪哉の前に置いた。

「社長、お昼ご飯と胃薬です」

藤崎雪哉はうなずき、胃薬を飲んでからお弁当箱を開けた。

いくつかの弁当箱には、それぞれ金柑入り山芋のおかゆ、野菜炒め、蒸したかぼちゃ、そして可愛い形のおにぎりが入っていた。