二日間の緊張した試験が終わるとすぐに、彼女はいつものようにしらゆりマンションに戻った。
マンションの下に着くと、鈴木紀子と西村千晴が階段に座っているのが見えた。
「どうして携帯の電源を入れないの?私と千晴があなたとお祝いしたくて、でもどこにいるのか分からなかったわ」紀子は口をとがらせて文句を言った。
「忘れてた」工藤みやびは二人を連れて上階に行きながら言った。「お祝いするならここでしましょう、どうせ私は一人で家にいるし」
「いいわ、今日はまずあなたの家でお祝いして、明日は私が予約した場所に行きましょう」
紀子は部屋に入るとすぐに、あちこち触ったり嗅いだりし始めた。
「あなた、犬みたいなことやめてくれない?」西村千晴は嫌そうな顔をした。
「私は藤崎千明様の匂いを嗅いでるのよ」紀子は堂々と言い返した。
工藤みやびは二人に飲み物を注ぎながら、冷たく現実を突きつけた。
「藤崎千明はずっと来てないわ、ここはすべて掃除して消毒したから、あなたが嗅いでるのは消毒液の匂いかもね」
藤崎千明はあの少しチャラくてかっこいい顔以外に、あのふざけた性格で、彼女が何に夢中になっているのか本当に理解できなかった。
紀子はがっかりしてソファに倒れ込んだ。「みやび、『長風』はいつ撮影開始するの?」
「来週の水曜日よ。月曜日に映画村に出発するから、帝都にはあと数日しかいられないわ」工藤みやびは正直に言った。
「じゃあ、いつ戻ってくるの?」紀子は哀れっぽく尋ねた。
やっと試験が終わって一緒に遊べると思ったのに、彼女は撮影に行ってしまうなんて。
「分からないわ。予定では2ヶ月だけど、撮影の進み具合が遅ければ、3、4ヶ月になるかもしれない」
良い映画は細部まで磨き上げる必要があるから、撮影期間は予測できないものだった。
「じゃあ私たちと遊ぶ時間がないじゃない」西村千晴は不満そうに言った。
「あなたたち、撮影現場に来ることもできるわよ。あなたの憧れの人も見られるし」工藤みやびは笑いながら言った。
紀子はそれを聞くと、すぐに目を輝かせた。
「行く、行く、行く、行くわ、あなたの撮影現場に」
「あなたは千明に夢中になりに行くだけでしょ」西村千晴は冷ややかに言った。