工藤みやびは携帯を見た。この時間はまだ彼の退社時間ではないはずだが、なぜ帰るのだろう?
石橋林人は相手が電話を切ったのを見て、尋ねた。
「じゃあ、親戚の家の電話番号を一つ教えてくれないか?もし君に連絡が取れない時に、君が住んでいる場所に連絡できるように。」
「それは……」工藤みやびは苦笑いして言った。「あまり都合が良くないんです。」
藤崎雪哉の電話番号を、彼女が簡単に人に教えられるだろうか?
石橋林人は彼女の困った様子を見て、彼女が人の家に身を寄せている生活もあまり良くないのだろうと推測した。
そこで、密かに決心した。早めに彼女に安全で適切な住まいを手配しよう、この子はあまりにも可哀想だ。
工藤みやびは石橋林人の送迎の申し出を断り、自分でタクシーを拾ってアパートメントに帰った。