第150章 キスしてくれないなら、起きないよ

昨夜は彼女が酔っ払っていたので、彼がベッドにいることに全く気づいていなかった。

今、冷静に藤崎雪哉が彼女のベッドで寝ていることを知って、彼女はとても眠れなかった。

一晩中目を閉じていたが、神経が張り詰めて眠れなかった。

やっと夜が明けると、彼女は急いで藤崎雪哉を起こした。

「早く起きて、仕事に遅れるわよ。」

藤崎雪哉は口元に無言の笑みを浮かべ、ゆっくりと目を開けた。朝の陽光が窓から差し込み、部屋全体が暖かく包まれていた。

少女は明らかに眠そうな顔をしていたが、その眼差しは陽光よりも輝いていた。

こんな朝は、彼にとって驚くほど素晴らしく感じられた。

だから、藤崎雪哉はすぐに起きる気はなく、眉間に怠惰な笑みを浮かべて尋ねた。

「彼女、おはようのキスをくれないか？」

「……」工藤みやびは口角を引きつらせた。

今、彼女が与えたいのは回し蹴り一発で、彼を仕事に行かせて、自分は二度寝したかった。

「歯を磨いてないから、口臭いわ。」

「気にしないよ。」藤崎雪哉は悠然と待っていた。

工藤みやびは、キスしないと起きないという彼の態度に、歯がゆさを感じた。

「もしキスしなかったら？」

「なら僕からするよ。」藤崎雪哉は口角を軽く上げた。

一晩中眠れず、朝からキスを求められる工藤みやびの気分は最悪だった。

しかし、嫌でも別れることもできないなら、どうすればいいのか？

彼女は肘で少し前に這い寄り、男性の美しい曲線を描く薄い唇にキスをした。軽く啄むようにして、すぐに離れた。

藤崎雪哉は満足げに、手を伸ばして彼女の頭を撫でた。

「早く起きて朝食を食べよう。」

言い終わると、ようやく自分の部屋に戻って着替えに行った。

工藤みやびはベッドに倒れ込み、不満を発散するようにベッドを何度か叩いた。

しばらくして、ようやく恨めしげな表情で目の下のクマを見せながら朝食を食べに起きた。

昨夜の火鍋が辛すぎて胃が苦しかったので、使用人が用意した野菜粥を見て、急いで一杯平らげた。

朝食を食べ終わるとすぐに、藤崎雪哉たちが仕事に出かける前に、彼女は部屋に戻って二度寝をした。

藤崎雪哉が彼女のベッドで寝ていないので、すぐに夢の中へと入り、午後まで一気に眠った。