第151章 藤崎奥様が訪ねてきた

藤崎雪哉は会社に行かなかったが、家に残っても処理すべき仕事が山積みだった。

工藤みやびがリビングで台本を読んでいたので、彼も仕事をリビングに持ってきた。

彼はソファに座って書類を見ながら、時々カーペットの上で真剣に台本を読んでいる少女を見やった。

それぞれが自分のことをしていたが、どこか穏やかな日常の感触があった。

ただ、このようなデートは、恋人同士のデートとは到底言えなかった。

工藤みやびは数シーンのセリフを読み終えると、立ち上がって水を一杯注いで戻ってきて座り、藤崎雪哉をちらりと見たが、思いがけず視線が重なってしまった。

藤崎雪哉は目を伏せて書類を見続け、何気なく一言尋ねた。

「一昨日の夜、小沢子遠に会ったから酒を飲んだのか?」

工藤みやびは二秒ほど固まり、後ろめたさを感じながらカップを持って一口水を飲んだ。