工藤みやびと彼女のマネージャーは怒りで一晩中眠れなかったが、帝都にいる石橋林人は興奮で一晩中眠れなかった。
夜が明けるとすぐに、撮影現場にいる工藤みやびに電話をかけた。
「君は素晴らしい仕事をしたよ。昨夜の人命救助のニュースはすでにトレンド2位まで上がっている」
工藤みやびは2秒ほど呆然としてから、彼が何を言っているのか理解した。
「あの...人命救助は本当に偶然だったんです」
もともと彼女の計画は、竹内薫乃に恥をかかせて、ネット上で彼女を踏み台にして話題作りをさせないようにするだけだった。
まさか、彼女が気絶して病院に運ばれるとは思わなかった。
撮影チームがロケ地に移動して外景シーンの撮影を始めたとき、藤崎千明のファンが事故に遭い、彼女はただ手を貸して救っただけだった。
「これはあなたにとって非常にポジティブなファン獲得の宣伝になっている。一晩でツイッターのフォロワーが約100万人も増えたんだ」石橋林人は興奮を抑えられなかった。
竹内薫乃のような自己宣伝ばかりで、気絶して同情を買うようなニュースと比べて。
彼女のような人命救助のポジティブなエネルギーは、より宣伝価値がある。
特に、救ったのが三の若様のファンだったことで、三の若様のファングループ内で高く評価され、多くのファンを獲得した。
工藤みやびは穏やかに微笑んで言った。「それはあなたのおかげです」
当時は人を救うことだけを考えていたが、今では思いがけず良い結果になったようだ。
「そうだ、今日は君の誕生日だね。私はそちらに行けないけど、撮影チームの皆と一緒に祝ってくれ」
「わかりました」工藤みやびは時間を確認し、石橋林人との電話を切った。
その後、洗面を済ませ朝食を取り、メイクチームに向かって撮影の準備をした。
竹内薫乃がまだ病院から戻っていなかったため、午前中も彼女と藤崎千明のシーンを撮影した。
午後になってようやく竹内薫乃が撮影現場に到着し、撮影チームの全員にコーヒーと温かい飲み物を買ってきた。
さらに、監督チームとカメラチームに対して姿勢を低くして謝罪し、自分が足を引っ張って撮影スケジュールを遅らせたことを詫びた。
午後、3回のNGの後、竹内薫乃はようやく黒鳶一門の血の粛清シーンを撮影し終えた。
監督は時間を確認し、拡声器を持って言った。