第166章 荒木雅は想像以上に素晴らしい

竹内薫乃は不満ながらも、礼儀正しく化粧室に戻って身支度を続けた。

彼女は荒木雅が撮影初日の最初のシーンを演じたとしても、彼女が脇役であるという事実は変わらない。それも原作ファンに嫌われている脇役だ。

『長風』の撮影初日、安藤泰監督は工藤長風と小倉穂が平和市の月影亭で初めて出会うシーンを撮ることに決めた。

平安時代、黒鳶一門の大弟子である工藤長風が明月教の宝の地図を手に入れたという噂が広まり、各派の追跡と殺意を引き起こした。

月影亭は客で賑わっていた。

工藤長風は上等な女児紅を一杯注ぎ、自分の斜め後ろを横目で見た。

片手で酒杯を持ち上げ、もう一方の手をテーブルに置いた剣に伸ばすと、抑えられた殺気が酒楼の大広間に広がった。

彼の後ろに座っている二つのテーブルの人々の目には、貪欲さと殺意が輝いていた。

数人が互いに目配せし、一斉に武器を抜いて工藤長風の背中に突き刺そうとした。

血なまぐさい月影亭の中、二階のテーブルに座る青い服の酒客が悠然と杯を持ち上げ、酒の香りを嗅ぎ、下階の戦いの様子を無関心に一瞥した。

この騒ぎに少しも酒を味わう興味を妨げられることはなかった。

しかし、飛んできた手裏剣が彼女の酒壺を砕いた時。

小倉穂は眉をひそめ、扇子を手に取り、足先で軽く跳ねて下階へ舞い降りた。

手の中の扇子を開いたり閉じたりしながら、華麗で異様な技を繰り出し、すぐに工藤長風と共に襲ってきた江湖人たちを退けた。

工藤長風は長剣を一振りすると、剣の上に二つの酒杯が乗り、テーブルの女児紅を取って二杯の酒を注いだ。

自分は一杯を持ち、長剣を横に構えてもう一杯を小倉穂の前に差し出した。

「私は工藤長風と申す。あなたのお名前は?」

小倉穂は「工藤長風」という名前を聞いて少し驚き、扇子を閉じて酒を受け取り、口元に邪悪で冷たい笑みを浮かべた。

「小倉穂だ。」

そして、二人は散らかった月影亭で酒を酌み交わし、語り合った。

……

『長風』の撮影初日の最初のシーンは、無事に終了した。

総監督は撮影された映像をもう一度確認し、その表情は十分に満足していることを示していた。

荒木雅は想像以上に素晴らしく、風魔流の若様の高慢さと邪気を完璧に演じていた。

女性が男装しているにもかかわらず、少しも女らしさを見せなかった。