第181章 荒木雅こそが私の運命のアイドル

工藤みやびは遠く離れた撮影現場を見て、少女を見下ろした。

「怖くないなら、戻りましょう」

少女は頬を赤らめ、うっとりと頷いた。

工藤みやびは馬の腹に足を当て、少女を乗せて撮影現場へ戻ったが、馬のスピードを慎重にコントロールし、あまり速く走らせなかった。

撮影現場近くにいた鈴木紀子と多くの「千明ファン」たちは、彼女が馬で追いかけて行き、少女を無事に救出するのを見て、興奮して悲鳴を上げた。

そして、古装束姿の工藤みやびが丸山日和を乗せて馬で戻ってくるのを見て、「千明ファン」たちは鈴木紀子や西村千晴よりも興奮していた。

みんなスマホやカメラを取り出し、馬で戻ってくる二人を撮り続けた。

「うわ、かっこいい!」

「ああああ、まるで映画を見るより素晴らしい、小倉穂さんカッコよすぎ!」

「日和ちゃん幸せね、こんなにカッコいい風魔流の若様にヒロイン救出されて!」

「私も風魔流の若様と馬に乗りたい」

……

工藤みやびは馬を止め、自分が先に降りてから、丸山日和を馬から助け降ろした。

「次はこんな危険なことをしないでね」

「ありがとう、わかりました」

丸山日和は彼女を見つめ、心はピンク色の甘い泡でいっぱいだった。

「若様、馬に乗る姿がとてもかっこいいです!」

「陰険で毒々しい風魔流の若様が、時空を超えて現代の困った少女を救う、ああ、素敵すぎる」

「さっきの救出シーン、本当にかっこよかった」

……

「千明ファン」の一団が彼女を取り囲み、写真を撮っていた。

藤崎千明は衣装を変えて駆けつけたが、以前なら彼が現れるとすぐに集まってきたファンたちが、今は影も形も見えなかった。

あたりを探し回ると、彼女たちが全員工藤みやびを囲んでおり、彼が来たことに全く気づいていないことがわかった。

「なんだよ、これはどういう状況だ、こいつら偽ファンか?」

彼が来ているのに、誰一人として彼を見ていなかった。

小道具班のスタッフがそれを聞いて、笑いながら言った。

「さっき三の若様のファンが馬に乗って写真を撮っていたら、馬が驚いて大変なことになりそうだったんです。でも荒木雅さんの反応が早くて、馬で追いかけて、無事に救出したんですよ」

ファン訪問イベントは撮影チームが手配したもので、何か問題が起きれば撮影チームにも責任があった。