第180章 この王子は女の子

竹内薫乃の目に一筋の冷酷な光が走り、歯を食いしばって言った。

「どういうわけか、今日荒木雅の目を見ると、まるで魔法にかかったように自分をコントロールできなくなって、全く演技に入れなかったの」

彼女は昨夜、今日のシーンのために夜中まで準備していたのに、今日は全く演じることができなかった。

「もしかして、彼女は演技で私を押さえつけているの？」

「ありえない！」竹内薫乃は断固として否定した。

演技で相手を押さえつけるなんて、才能が極めて高く、演技が熟練した古株の俳優にしかできないことだ。

彼女、荒木雅のような業界に入ったばかりで、演技を全く学んでいない新人がどうしてそんなことができるだろうか。

彼女がずっとNGを出していたのは、おそらく雅のことが嫌いすぎて、集中して演技ができなかったからだろう。

マネージャーはそれ以上質問せず、携帯の着信を見て言った。

「ゆっくり休んで。私は会社に連絡して、あなたが撮影現場で倒れたことは確実にニュースになるから、会社側に世論をできるだけコントロールしてもらって、あなたがNGを出したことについては触れないようにしてもらうわ」

……

竹内薫乃が倒れて病院に行った後も、撮影は中断されず、撮影チームは2里ほど離れた平原地帯に移動した。

小倉穂と工藤長風が馬に乗って追いかけ、最後に対決する格闘シーンを撮影する準備をしていた。

工藤長風は衣装を変える必要があったため、工藤みやびと撮影チームの人々が先に来て待っていた。

彼女は自分がこれから撮影で乗る馬を引きながら、鈴木紀子と西村千晴のためにポーズをとって、彼女たちに写真を撮らせていた。

鈴木紀子は撮れば撮るほど気に入り、羨望の表情で言った。

「わぁ、神様、あなたってこんなにかっこいいの。また結婚したくなっちゃう」

「やめてよ、私はあなたと結婚したくないわ」

三人が楽しんでいる一方で、少し離れたところでは千明ファンたちが藤崎千明がこれから乗る馬を囲んで写真を撮っており、大胆な人は直接馬の背に乗っていた。

しかし、誰かのスマホのフラッシュが偶然に光り、馬の目がフラッシュに照らされると、馬は長く嘶いて蹄を上げ、走り出した。

馬の背に乗っていた女の子はまだ降りられず、怖くて馬の首を抱きしめて泣きながら助けを求めた。