『長風』の撮影が終盤に差し掛かり、毎日各ロケ地を転々としながら屋外シーンを撮影していた。
ただ、小倉穂と工藤長風が幼少期に出会い、友情を育んだ後に別れるシーンの撮影になった。
何度か撮り直したが、安藤泰監督はどうしても満足できず、何かが足りないと感じていた。
そこで、二人にそのシーンを何度も撮り直させた。
脚本家はモニターに映し出された映像を何度か見た後、提案した。
「考えていたんですが...小倉穂と工藤長風のキスシーンを追加してみてはどうでしょうか?」
監督はそれを聞いて、目から鱗が落ちたように頷いた。
「そうだ、そうだ、まさにそれだ。何か火花が足りないと思っていたのは、これだったんだ」
小倉穂は工藤長風に感情を抱いているが、今の撮影では弱く感じられる。
このキスシーンがあれば、すべてが明確になるだろう。