石橋林人は水を一口飲み、彼女の胸元をちらりと見た。
「まずは試着してみて、行かないわけにはいかないでしょう」
今となっては、彼女のために新しいドレスを探す時間はもうなかった。
胸の大きさで言えば、彼女は竹内薫乃のパッドで盛った胸よりも実際大きかった。
「これは……」
工藤みやびはドレスを手に取り、泣きそうな顔をした。
あのキスマークがファンデーションで隠せるかどうかもわからない。
彼女がファンデーションを持って着替えに行こうとしたとき、すでに準備を済ませた藤崎千明がやってきた。
高級オーダーメイドの黒いスーツに、目を引くシルバーグレーの髪が、彼の不良っぽくてかっこいい雰囲気を最大限に引き立てていた。
「どうしたんだ、さっきドレスが着られないって?」
「ドレスにコーヒーがついてしまって、代わりのものを見つけたんだ。今はこれしか着るものがない」石橋林人は工藤みやびが手に持っているシルバーホワイトの深いVネックのマーメイドドレスを指さした。