第211章 彼女が胸の開いた服を着ようとしている、どうするか

石橋林人は水を一口飲み、彼女の胸元をちらりと見た。

「まずは試着してみて、行かないわけにはいかないでしょう」

今となっては、彼女のために新しいドレスを探す時間はもうなかった。

胸の大きさで言えば、彼女は竹内薫乃のパッドで盛った胸よりも実際大きかった。

「これは……」

工藤みやびはドレスを手に取り、泣きそうな顔をした。

あのキスマークがファンデーションで隠せるかどうかもわからない。

彼女がファンデーションを持って着替えに行こうとしたとき、すでに準備を済ませた藤崎千明がやってきた。

高級オーダーメイドの黒いスーツに、目を引くシルバーグレーの髪が、彼の不良っぽくてかっこいい雰囲気を最大限に引き立てていた。

「どうしたんだ、さっきドレスが着られないって?」

「ドレスにコーヒーがついてしまって、代わりのものを見つけたんだ。今はこれしか着るものがない」石橋林人は工藤みやびが手に持っているシルバーホワイトの深いVネックのマーメイドドレスを指さした。