夜の11時、工藤みやびはマネージャーとアシスタントを連れて西新宿の空港で、先に到着していた藤崎千明と合流した。
マネージャーの石橋林人は藤崎千明がわざわざ彼らを待っていたのを見て、彼女の後ろで小声で尋ねた。
「前回、大ボスが撮影現場を訪れた時、会った?」
工藤みやびは一瞬戸惑い、「……少し会いました」
彼が言う大ボスとは、もちろん藤崎雪哉のことだ。
「大ボスに良い印象を残せた?」石橋林人は緊張した様子で尋ねた。
「え?」工藤みやびは眉を上げた。
「我が事務所のタレントが大ボスに会える機会は本当に稀だよ。結局、良い印象は残せたの?」石橋林人は追及した。
工藤みやびは呆れて反問した。「石橋林人兄さん、あなたは今は私のキャリアを優先して、枕営業で道を外れるなって言ったじゃないですか?」