第237章 彼の兄に嫉妬を送る

映画の初公開前の最後の宣伝活動は、ある大学の創立記念イベントの最後に行われることになっていた。

宣伝計画では、竹内薫乃が大学のダンス部の女子学生たちと一緒にダンスを披露し、その後、自分と映画スタッフを紹介することになっていた。

そして藤崎千明と一緒に『長風』のテーマソングを歌い、学生たちと数分間交流して映画の宣伝をする予定だった。

竹内薫乃は以前に青春アイドルドラマを2本主演していたため、多くのファンがいた。

しかし当日、竹内薫乃は足を捻挫してしまい、大学に着いてからやむを得ずスタッフに状況を説明した。

「すみません、自分で頑張れると思ったんですが、今はどうしようもないんです」

「じゃあ、どうしましょう。すでに学校側と調整済みなのに」宣伝担当者は困った様子だった。

映画の宣伝において、ファンを失望させるようなことは絶対に避けなければならない。

そのダンス部の女子学生たちも、多くが竹内薫乃のファンだった。

竹内薫乃は監督と宣伝担当に何度も謝罪し、傍らにいる工藤みやびを見た。

「じゃあ、雅に行ってもらったらどう?最近の宣伝はずっと私と三の若様がメインだったし、彼女にもチャンスをあげるべきよ」

竹内薫乃のマネージャーも続けて勧めた。「薫乃がダンスをして足をさらに傷めたら、後の宣伝活動に支障が出ます。荒木雅を行かせるのも映画宣伝のためです」

石橋林人は呆れて目を回した。まるで彼らに行かせることが、大きなチャンスを与えるかのように言っている。

彼女は午後に足を捻挫したのに、今になって雅に行かせると言い出す。練習する時間さえ与えていない。

これはチャンスではなく、わざと雅を舞台で恥をかかせようとしているのだ。

宣伝担当者は工藤みやびを見て、「みやびさん、行けそう?」と尋ねた。

彼女も、こんな短時間でダンスを覚えて練習し、さらに舞台で披露するのは、確かに無理な話だと思っていた。

「大丈夫です、今すぐ行きましょう」工藤みやびは協力的に答えた。

スタッフが彼女を案内し、石橋林人も急いで後を追った。

「あの子はわざとあなたを恥をかかせようとしているのに、なぜ行くの?」

「映画の宣伝のためですから」工藤みやびは言った。

石橋林人はため息をつき、もう説得するのをやめた。

「先に宣伝担当と行っていて。私とアシスタントはあとで行くから」