亜蘭国から帰ってきた竹内薫乃は、ツイッターに一つの投稿をした。
[西居都空港で、憧れの堀夏縁さんに偶然会えた。本当に超優しくて美しい。]
投稿には写真が添えられていて、彼女と堀夏縁が空港で撮った記念写真だった。
堀夏縁は数々の国際映画賞を受賞した女優で、最近は心臓移植手術を受けた後、東京国際映画祭で復帰を果たしたばかりだった。
ネット上で話題沸騰中であり、普段は人との写真撮影を滅多に許さないことでも知られていた。
竹内薫乃のこの投稿は、堀夏縁の人気に便乗して再び注目を集めることになった。
石橋林人はそれを見て、呆れたように鼻を鳴らした。
「彼女は本当に話題に便乗するのが上手いね」
岡崎アシスタントは恐る恐る工藤みやびの方を見た。「みやび姉さんは工藤家を訪問したのに、それを投稿したら彼女の出る幕なんてないのに」
石橋林人は彼女を見て言った。「あの時、トップ女優の堀さんがあなたに写真をお願いしたのに、なぜ撮らなかったの?」
「私は彼女のファンではないから」工藤みやびは穏やかに微笑んで答えた。
彼女がいなければ、堀夏縁はあの映画を撮ることさえできなかった。
あの頃、彼女が長くは生きられないと思い、夢を叶えさせてあげたかったのだ。
自分も演技が好きだったが、工藤家のお嬢様である彼女には、女優という仕事は許されなかった。
だからこそ、女優になりたかった堀夏縁に出会った時、特別に面倒を見てあげたのだ。
映画の脚本選びから撮影、制作まで、彼女は全過程に関わっていた。
映画はちょうど不治の病と闘う患者の物語で、堀夏縁は実体験を演じることになり、公開されるとたくさんの人々の心を動かした。
彼女は自らの手で堀夏縁をスターダムに押し上げ、女優になるという夢を叶えさせた。
しかし結果として、彼女は命の危機に瀕した時に彼女を害し、心臓を奪って自分の命を救うために移植した。
彼女がいなければ、堀夏縁はとっくに死んでいただろう。伝説の女優になることなど論外だった。
「まあいいよ、もし本当に彼女のファンだったら、三の若様が不機嫌になるだろうしね」と石橋林人は言った。
藤崎家と工藤家は常に敵対関係にあり、堀夏縁は工藤司の女だった。
彼女が堀夏縁のファンだったら、三の若様は怒り狂うだろう。