第244章 金を使って映画館を貸し切るなんて馬鹿げたこと

映画の上映が終わると、映画館内に雷のような拍手が響き渡った。

藤崎千明と竹内薫乃のファンたちはすぐに彼らの前に押し寄せ、それぞれの推しの演技を褒め称えていた。

工藤みやびだけは、マネージャーとアシスタントしかいない寂しい状況だった。

しかし、安藤泰監督の隣にいた映画評論家が、自ら彼女に挨拶をしに来た。

「荒木雅さん、あなたの演じた小倉穂は心に響きましたよ」

出番はそれほど多くない女二号だったが、映画全体を通して最も印象に残ったのは小倉穂だった。

さらに、今でも彼女が演じた全てのシーンを鮮明に覚えているほどだった。

彼はプロの映画評論家で、数え切れないほどの映画を観てきたが、若い世代の俳優の中で、彼女は初めて彼の目を見張らせた俳優だった。

彼女がわずか19歳だということが、信じがたいほどだった。

工藤みやびは頷いて微笑み、「ありがとうございます」と言った。

石橋林人はこの映画評論家について彼女に話したことがあった。彼の評論は常に辛辣で洞察力があり、俳優の演技に対して非常に厳しい目を持っていた。

ファンがいなかったため、彼女はマネージャーとアシスタントと共に早々にホテルに戻って食事をすることにした。

料理が運ばれてきたところで、アシスタントがスマホを見ながら叫んだ。

「竹内薫乃の彼氏が、公開初日の帝都の10の映画館を貸し切ったんです。全ての薫乃ファンを無料招待するって」

石橋林人はツイッターを開いて確認すると、小沢子遠のツイートが薫乃のファンたちによって狂ったように拡散され、トレンド13位に入っていた。

「さっき聞いたところによると、三の若様のファンも全国各地で多くの映画館の回を貸し切ったらしいです」と岡崎アシスタントがつぶやいた。

「三の若様のあの女性ファンたちは、彼の映画が公開されるたびにいつもこんな風に熱狂するじゃないか」と石橋林人は軽蔑したように鼻を鳴らした。

三の若様のルックスファンや恋愛対象としてのファンたちは、彼の演技がどんなに酷くても、必ず観に行くのだ。

岡崎アシスタントは石橋林人を見て、「私たちは何かすべきじゃないですか?みやびさんの演技はとても良かったですよ」と言った。

彼女も先ほど映画を観たが、自分たちのタレントの演技は竹内薫乃の主役よりずっと良かった。