第277章 異常事態には必ず妖あり

早朝、工藤みやびは誰かのキスで夢から覚めた。

「起きて、一緒に出勤しよう」

「午後にはオーディションがあるの」工藤みやびは眠そうな目でつぶやいた。

いい大人なのに、出勤するのに付き添いが必要なの?

「午後は岡崎謙に送らせるよ」

藤崎雪哉は彼女を布団から引っ張り出した。あと二日で彼女はまた仕事で忙しくなる。会える時間がまた少なくなってしまう。

工藤みやびは不本意ながら起き上がり、朝食を食べ、服を着替えて会社に付いていった。

もちろん、マスクをしたままで。

会社は人が多く目も多い。彼女が素顔を見せれば、明日にはまた見出しを飾ることになるだろう。

19階のオフィスの社員たちは、自分たちのボスがまた彼女を連れて出勤してきたのを見て、喜びと憂いが入り混じった表情を浮かべた。

喜ばしいのは、今日の仕事がきっと非常に楽になること。