早朝、工藤みやびは誰かのキスで夢から覚めた。
「起きて、一緒に出勤しよう」
「午後にはオーディションがあるの」工藤みやびは眠そうな目でつぶやいた。
いい大人なのに、出勤するのに付き添いが必要なの?
「午後は岡崎謙に送らせるよ」
藤崎雪哉は彼女を布団から引っ張り出した。あと二日で彼女はまた仕事で忙しくなる。会える時間がまた少なくなってしまう。
工藤みやびは不本意ながら起き上がり、朝食を食べ、服を着替えて会社に付いていった。
もちろん、マスクをしたままで。
会社は人が多く目も多い。彼女が素顔を見せれば、明日にはまた見出しを飾ることになるだろう。
19階のオフィスの社員たちは、自分たちのボスがまた彼女を連れて出勤してきたのを見て、喜びと憂いが入り混じった表情を浮かべた。
喜ばしいのは、今日の仕事がきっと非常に楽になること。