石橋林人と工藤みやびは村上正弘のツイッターと、そのツイッターにあるいくつかのコメントをチェックし終えて、二人とも安堵のため息をついた。
今夜は忙しくて眠れないだろうと思っていたのに。
今となっては、今夜眠れないのは竹内薫乃と彼女のマネージャーだろう。
「よし、これで私たちの出番はないね?」
村上先生のこの一撃に加えて、三の若様の助太刀で、この二日間は竹内薫乃と彼女のチームにとって十分忙しいものになるだろう。
工藤みやび:「でも、パトロンの件はどうするの?もう釈明しなくていいの?」
石橋林人はメモ帳を閉じた。「今はみんな恥をかかされる現場を見物しに行っているよ。誰があなたのゴシップに関心を持つかい?」
竹内薫乃は彼のアーティストを踏みにじろうとしたが、結果的に村上正弘に恥をかかされた。
今やそのパトロン事件は、少しでも頭のある人なら、全くの風説に過ぎないことがわかるだろう。
彼のアーティストは本当に生まれながらの幸運児だ。彼はスーパースターを育てることになるという予感がした。
工藤みやびは何の労力もなく危機が去ったと聞いて、立ち上がって言った。
「じゃあ、私は休みに戻るわ。」
彼女は階段を上がって自分の部屋に戻ったが、ドアを開ける前に隣の藤崎千明の部屋のドアが開いた。
「ほら、兄貴が君に夕食を届けさせたよ。」
工藤みやびはそれを受け取り、藤崎千明をちらりと見た。
「ツイッターの件、ありがとう。」
藤崎千明はドアに寄りかかって立っていた。「君が僕の未来のお義姉さんだからね。」
工藤みやびはルームカードを取り出し、彼に説明する気も起きなかった。
藤崎千明:「そうだ、写真を送るよ。誰かがパトロンの件について聞いてきたら、この写真を見せればいい。誰も文句を言えなくなるさ。」
「お断りできる?」
工藤みやびはそう言って、部屋に入った。
保温弁当箱を開けると、ご飯とスープ、肉料理一品と野菜サラダがあり、栄養バランスが良く取れていた。
彼女が座って携帯を取り出すと、藤崎千明から写真が送られてきた。
何気なく開いてみると、彼女と藤崎雪哉がキスしている写真だった。あの藤の花のアーチの下で盗撮されたものだ。
削除しようと思ったが、ふと気づいた...彼女は藤崎雪哉の写真を一枚も持っていなかった。