第285章 おやすみなさい、藤崎おじさん

藤崎千颯が藤崎雪哉は本間家と自分のことを追跡するよう人に指示していると言ったとき、工藤みやびは少し落ち着かなくなった。

そこで、階下に誰も気づいていないのを見計らって、こっそり書斎に忍び込んだ。

藤崎雪哉は電話中で、横を向いて彼女を見ると一瞬驚いた様子で、電話を切ってから言った。

「何か用?」

実家に戻ってからというもの、彼女は彼に食べられてしまうのではないかと恐れるかのように、毎日様々な方法で二人きりになることを拒否していた。

それが今は、自分から彼のところにやってきたのだ。

工藤みやびは持ってきたコーヒーとお菓子を掲げて、「夕食をあまり食べていなかったから、少し食べ物を持ってきたの」と言った。

藤崎雪哉は手元の仕事を置き、薄い唇に淡い笑みを浮かべた。

「今日は僕から逃げないんだね?」