一時間後、藤崎千明は車でしらゆりマンションに戻った。
しかし、すぐには降りず、車の中に隠れてこっそりとメッセージを送っていた。
[みやび義姉さん、兄は...今、機嫌はどう?]
二日酔いの頭痛に悩まされ、頭部マッサージを楽しんでいた工藤みやびは、スマホを手に返信した。
[とても良いわ。すでに全ての報道とネットの話題を削除するよう手配したわ。]
藤崎千明はそれを聞いて、状況は彼が思っていたほど危険ではないようだと感じた。
そこで、もう一度メッセージを送った。
[兄さんに聞いてくれる?僕は上がってもいい?]
工藤みやびはそれを受け取り、尋ねた。
「三の若様が上がってもいいかって聞いてるわ」
藤崎雪哉は彼女の頭部のツボを押していた手を止め、「彼を懲らしめたい?」と言った。
「もちろんよ。あの人に何度も迷惑かけられたわ」
工藤みやびは昨夜起きたことを思い出し、歯ぎしりするほど腹が立った。
藤崎雪哉は彼女の背中をポンポンと叩いて言った。「服を着替えて、出かけよう」
工藤みやびは眉を上げた。「どこへ?」
「彼を懲らしめられる場所だ」と藤崎雪哉は言った。
工藤みやびは恨みを晴らせると聞いて、すぐに跳ねるように服を着替え、彼と一緒に階下へ向かった。
二人が降りると、めったに姿を見せない三浦大也も二人の部下を連れてきていることに気づいた。
藤崎千明は三浦大也も来ているのを見て、すぐに「まずい」と思い、振り返って車に乗り逃げようとした。
しかし、車のドアを開ける前に止められ、車のキーを奪われてしまった。
藤崎雪哉は冷たい視線で彼を一瞥し、言った。
「彼を連れて、いつもの場所へ」
「兄さん、行かない、行きたくない...」
藤崎千明は逃げようとしたが、体格のいい三浦大也に捕まってしまった。
「三の若様、抵抗しても無駄ですよ。自分から行くか、私が縛って連れて行くか、どちらにしても行くことになります」
工藤みやびは藤崎雪哉について先に車に乗り込んだ。後ろの車から藤崎千明の悲痛な叫び声が聞こえてきた。
二台の車はマンションを出発し、北部郊外へと向かった。
工藤みやびは道中ずっと、後ろの車から聞こえてくる藤崎千明の悲鳴を聞くことができた。
一体何をしに行くのだろう?普段あんなに傲慢な藤崎の三の若様がこんなに怯えているなんて。