「ずっと見つからなかったんじゃないの?こんなに早く情報が入ったの?」
彼女は無理に落ち着きを取り戻し、好奇心があるふりをして尋ねた。
彼はすでに本間夢が帝都に来たことを知っている。もう人を派遣して本間夢を捕まえに行ったのだろうか?
「今はまだ確実ではないが、あと数時間もすれば結果が出るだろう」藤崎雪哉は彼女に対して、特に隠し事をするつもりはなかった。
工藤みやびは内心ほっとした。つまり、まだ本間夢は捕まっていないということだ。
よかった、自分が先に戻ってきて。
そうでなければ、自分と本間夢が会っているところを彼に現場を押さえられていたかもしれない。
しかし、彼があと数時間で結果が出ると言ったということは、あと数時間で本間夢を見つけ出せるということだ。
だめだ、何か方法を考えなければ。本間夢を彼に捕まえられるわけにはいかない。
本間夢は明言していなかったが、彼女は師匠が前回の怪我の後、状態が良くないと予感していた。
だから、本間夢だけが彼女に会いに来たのだ。
一度本間夢が捕まれば、藤崎雪哉の手段で彼女が本間夢と連絡を取っていたことがすぐにばれるし、師匠のところにも問題が及ぶだろう。
しかし、彼女と本間夢は特定の時間にしか連絡を取り合わない。
今この時間に電話をかけても、彼女と連絡が取れるはずがない。
今は、本間夢に帝都を離れるよう通知する方法が全くない。
彼女が焦りながらどうすべきか考えていると、鈴木紀子からまた電話がかかってきた。
「みやび、出発した?」
工藤みやびは衣装部屋に入り、小声で言った。
「今日は用事があって、行けなさそう。また今度会おうか?」
鈴木紀子は彼女が忙しいことを知っていたので、特に詳しく聞かずに了承した。
工藤みやびは電話を切り、もう一台の携帯電話を取り出して本間夢に連絡を試みたが、やはり連絡が取れなかった。
彼女は携帯電話をしまい、代わりに藤崎雪哉の書斎に向かった。事態の進展をリアルタイムで把握し、臨機応変に対応するためだ。
藤崎雪哉は会社の書類を処理していた。彼女は本を一冊取り、横に座って心ここにあらずに本をめくっていたが、本の内容は一文字も頭に入らなかった。
「外出する用事があるんじゃなかったのか?」藤崎雪哉が尋ねた。
「ああ、千晴に用事ができて、会って食事することができなくなったの」