工藤みやびは口角を少し上げ、口では相変わらず容赦しなかった。
「つまり結局、私が悪いってことね?」
「昨夜お前があまりに誘惑的だったからだ」藤崎雪哉はそう言いながら、彼女の唇に軽くキスをした。
待たされたのは少し長かったが、昨夜の彼女のパフォーマンスは、十分な埋め合わせになっていた。
工藤みやびは顔を赤らめ、恥ずかしさと悔しさが入り混じった。
「昨夜のことを蒸し返さないでくれる?」
自分が何度も彼にしがみついて、ベッドから降りさせなかったことを思い出すと、顔を置く場所もなかった。
「昨夜はあんなに大胆だったのに、今になって恥ずかしがるのか?」藤崎雪哉は冗談めかして尋ねた。
本来の用事が遅れてしまったが、彼は残ったことを後悔してはいなかった。
結局、このような良い機会を逃したら、次はいつになるかわからないのだから。
工藤みやびは歯を食いしばって手元の台本のページをめくった。「もう話しかけないで」
このバカ男、また昨夜のことで彼女をからかっている。
まるで彼女が大きな得をしたかのように言うけど、実際は彼自身がとても楽しんでいたのに。
藤崎雪哉は彼女が本当に怒ったのを見て、昨日のことでからかうのをやめた。
「でも、昨日のお前は...少し普段と違ったな?」
以前はあんなに騒がなかったし、昨夜ほど情熱的に彼にまとわりつくこともなかった。
工藤みやびは後ろめたさを感じながら唇を噛み、顔を上げると甘い笑顔を浮かべた。
「わかったわ、これからは絶対に普通にするから、もうあなたに不埒な考えを抱いたりしないわ」
やはり、彼は少し疑っているようだった。
ただ、何の手がかりも見つけられなかったので、頭の中は整理がついていないようだった。
藤崎雪哉はそれを聞くと、腕を伸ばして彼女を抱き寄せた。
「それは必要ない。ただ、もしお前が本心からではなかったら、後悔するんじゃないかと思っただけだ」
「私は結構後悔してるわよ、今は体中が痛くて死にそう」工藤みやびは膨れながら鼻を鳴らした。
本間夢のために時間を稼ぐためにそうしたとはいえ、彼女は後悔していなかった。
どうせ、二人はいずれこの段階に至るはずだったのだから。
藤崎雪哉は笑いながら、彼女の額にキスをした。
「今さら後悔しても遅いぞ」
どうやら、彼の心配は杞憂だったようだ。