第312章 彼女はまだ面目を保ちたい

「……」

工藤みやびは二秒間呆然としてから、果断に彼の腕から這い出し、自分で枕を抱えてベッドの端に座った。

藤崎雪哉が手を伸ばして彼女を引き寄せようとすると、彼女は警戒心いっぱいの表情でベッドの端へと少し移動した。

「近づかないで」

昨晩の体力消耗からまだ回復していないのに、今夜もまた?本当に彼女をこのベッドで死なせたいの?

もしやり直せるなら、あんな命がけの方法で本間夢を救おうとはしないだろう。捕まるなら捕まればいい。

あんな風に人を救うのは、自分を犠牲にしすぎる。

藤崎雪哉はそれ以上近づかず、彼女の要求通りに距離を置いて、自分のことをしていた。

工藤みやびは片隅に座り、台本を熱心に読んでメモを取り、二人はお互いを邪魔しなかった。

夕暮れになり、使用人が夕食を用意して、ドアをノックした。