この場面は2回NGになった後、ついに撮影が成功した。
監督は撮影されたこのシーンに非常に満足し、同時に撮影終了前にこう言った。
「今日以降、皆さんがこの作品に全力を注いでほしい。無駄なことに気を取られず、俳優は演技で語るものだ」
これは警告だった。演技に集中し、撮影現場での陰謀や争いに関わらないようにという。
撮影初日、北川秋は彼女に対して優位に立てなかったため、その後も彼女を煩わせることはなくなった。
さらに、土屋凪翔は各俳優に対する要求が高く、シーンが何回NGになっても、彼が求める効果を出さなければならなかった。
そのため、誰も他人に迷惑をかける余裕はなくなった。
工藤みやびのシーンは通常一発OKだったので、プレッシャーはそれほど大きくなかった。
さらに、ホテルには藤崎雪哉が手配した専属の管理人が特別に世話をしてくれていたため、彼女の『追跡の眼』での撮影生活は誰よりも楽で快適だった。
マネージャーがアシスタントを連れて朝早くに来て、彼女の最上級スイートルームの朝食を楽しんでいた。
彼女の携帯が鳴るのを見て、手渡した。
「ほら、またあのやーちゃんからよ」
工藤みやびは携帯を受け取り、立ち上がって寝室に行って電話に出た。数分後に戻って朝食を取り始めた。
石橋林人は新鮮なフルーツジュースを一口飲んで、好奇心を持って呟いた。
「あなたとそのやーちゃんの友情は深すぎるんじゃない?一日に何度も電話して、恋人同士でもそこまでしないでしょ」
工藤みやびは「友情」という言葉を聞いて、思わず口元の笑みがゆらいだ。
「えっと...感情が深いから、離れられないの」
石橋林人は彼女の携帯にいるやーちゃんについて疑うことなく、話題を変えた。
「そういえば、最近三の若様と何か問題があるの?」
「ないわよ?」工藤みやびは言った。
彼は最近兄とだけ問題があり、間接的に彼女とも問題があるようになった。
石橋林人は彼女を見上げて、「前回あなたたちがリアリティ番組に出た時、CPファンの反応はとても良かった。だから宮本兄さんと三の若様にあなたの撮影現場を訪問してもらおうと思ったんだけど、三の若様は断固として拒否したの。死んでも行かないって」
工藤みやびは笑いをこらえながら言った。
「彼も忙しいから、本当に来なくていいの」