第290章 自滅小分隊隊長

早朝、藤崎雪哉が起床すると、彼女も一緒に早起きした。

一緒に朝食を取ると、藤崎千明が彼女を空港へ急かしに来た。

工藤みやびは時間を確認し、慌ててスーツケースを引きながら言った。

「行ってくるね。」

藤崎雪哉は少し顔を曇らせ、手元の朝刊をめくりながら、何気なく尋ねた。

「何か忘れ物はない?」

工藤みやびは玄関まで行って考え込んだ。「荷物は全部揃ってるよ。」

藤崎千明はサングラスをかけ、呆れた様子で促した。

「兄さんの顔見てみろよ。『早くキスして、出かける前にキスを忘れないで』って顔に書いてあるじゃないか。」

以前は気づかなかったが、彼の兄には二つの顔があるようだ。

以前は人前でも裏でも冷たく無情だったのに、今は彼女の前では、その真面目さが内心の色気を抑えきれず、あの手この手でキスやハグをねだっている。

工藤みやびは藤崎千明を外に追い出してから、ダイニングに座っている男性のところへ戻り、キスをした。

「行くね、向こうに着いたら電話するから。」

「ああ。」藤崎雪哉はそっけなく返事をしたが、口角が上がったことで一瞬良くなった気分が露呈していた。

しかし、この良い気分も、会社に着いた後、藤崎千颯が持ってきた動画によって完全に台無しにされた。

動画には、工藤みやびと藤崎千明が空港にいる様子が映っており、多くのCPファンが二人のポスターを持って見送っていた。

さらに、ファンの中には二人の顔写真を大きなハートの中に合成した者もいて、その光景は目に痛いほどだった。

「見てよ、どれだけ多くの人が二人の関係を応援してるか?」藤崎千颯は携帯の動画を指さしながら言った。

しかし、明らかに昨日自分がリークした情報で、これらの人々が知って見送りに来たのだ。

藤崎雪哉の目に冷たい光が走り、横目で彼を一瞥した。

「何を喜んでいる?」

「喜んでなんかいないよ。兄さんの代わりに怒ってるんだ。あれはあなたの彼女なのに、藤崎の三の若様とこんなにCPファンがいるなんて...」藤崎千颯は義憤に駆られたように言った。

あれ?自分はそんなに喜んでいる様子が明らかだったのか?

ちょうど搭乗して離陸した藤崎千明は、なぜか不安を感じ、小さな胸を叩きながら隣の人に言った。