三日後、石橋林人は広告契約のために帝都に戻った。
彼女は午後に当日の撮影を終え、メイクを落として服を着替え、アシスタントと一緒に映画村の西門から出てホテルに戻ろうとしていた。
途中で何人かのファンからサインと写真を求められ、彼女は快く応じた。
そして、西門の休憩用ベンチに、青い短髪の女性が足を組んで座り、タバコを吸いながらキョロキョロと周りを見回し、誰かを待っているようだった。
容姿は変わっていたが、その座り方と目つきは、彼女がよく知っているものだった。
「岡崎さん、私のアクセサリーがメイクルームに置き忘れたみたい。取りに戻ってくれる?」
アシスタントの岡崎は、確かに彼女が朝来た時にイヤリングをしていたことを思い出した。それは広告契約しているブランドのものだった。
最高級ブランドではなかったが、それでもかなり高価なものだった。
「ここで待っていてください。すぐに取りに行きます」
「うん、あそこで待ってるね」工藤みやびは少し離れたベンチを指さした。
岡崎アシスタントは荷物をベンチに置き、すぐに引き返して彼女の物を探しに行った。
工藤みやびはベンチに座り、携帯を取り出して電話を受けるふりをした。
「本間夢?」
青い短髪で薄いスモーキーメイクをした本間夢が横を向き、彼女を頭からつま先まで観察した。
この場所で会う約束をしたのは、一昨日電話で話した工藤みやびしかいなかった。
しかし、その容姿は彼女が知っている工藤みやびとはまったく違っていた。
工藤みやびは携帯を持ちながら、周囲を見回しつつ言った。
「もう見ないで。師匠はどうしてる?」
本間夢は視線を戻し、自分も携帯を取り出して電話をしているふりをした。
「彼は怪我をして、今は療養中だから、会いに来られないわ」
彼女は電話をしながら、目の端で隣に座っている人を観察していた。
他人の体に生まれ変わるなんて、冗談のように聞こえる。
しかし、彼女の隣に座っているこの人物は、本間家での出来事をすべて知っていた。
「一度死んだけど、若返ったみたいね。見た目も前より悪くないわ。ただ...胸が小さくなったかな」
工藤みやびは額に手を当て、「本題に入れない?」と言った。
本間夢は咳払いをして尋ねた。
「あなたは工藤司に連れ戻されたはずよ。一体何があったの?」