第330章 あなたは誰かと密かに付き合っているの

「もちろん違うわ」工藤みやびは否定した。

藤崎雪哉がまだ彼女の部屋にいるのに、この否定はなんとも心虚いものだった。

石橋林人はエレベーターのボタンを押し、怒って言った。

「いないならいいけど、変なやつらがお前に近づくなんて許さないからな」

工藤みやびはエレベーターに乗り込んで尋ねた。「佐藤臣のことはどうなった?」

「あいつか?」石橋林人は冷たく鼻を鳴らし、腕を組んで言った。「昨夜、千秋芸能のタレント全員に話をつけた。これからは佐藤臣の仕事は、奪えるものは全部奪ってやる」

アシスタントの岡崎はそれを聞いて、意見を述べた。

「でも『追跡の眼』が公開されたら、彼の人気は間違いなく上がりますよ。千秋のタレントがどれだけ奪っても、そう多くは奪えないでしょう」

土屋凪翔監督の大作だ。たとえ彼が男性二番手の役だとしても、人気は低くならないだろう。