「……」
工藤みやびは言葉を失い、彼女との会話を続けることを諦めた。
「お風呂も入ったし、お酒も飲んだし、まだ帰らないの?」
本間夢はお酒を飲み終え、伸びをして、特に妖艶な姿勢で彼女のベッドに横たわった。
「せっかく会えたんだから、一緒に寝てから帰るわ」
「師匠と寝てきなさいよ」
工藤みやびはワイングラスを洗い、本間夢が部屋に残した痕跡を片付けていた。
「藤崎雪哉の女を抱く感覚を味わわせてくれないの?」本間夢は片手で頭を支え、妖艶に不満を漏らした。
「先輩、冗談はやめて、早く本題に入りましょうよ」工藤みやびは歯を食いしばって諭した。
彼女がここにいる一分一分が、彼女にとっては気が気ではなかった。
特に明日もまた一日撮影があるのに、今夜ゆっくり休めなければ、明日の調子が悪くなるだろう。
しかし本間夢はベッドを叩きながら、にこにこと言った。
「ほら、寝よう」
二人が冗談を言い合っていると、部屋のドアベルが鳴った。
工藤みやびがベッドを見ると、本間夢はすでに素早く飛び起き、クローゼットに隠れていた。
彼女は部屋を少し片付けてから、ドアを開けた。
「荒木さん、午後に部屋を掃除した際、バスルームの蛇口に問題があったので交換に来ました。うまく直っているか確認させてください」
「ありがとう」工藤みやびは横に身をよけ、人を中に入れた。
プライベートハウスキーパーはバスルームをチェックし、出てきて言った。
「もう問題ありません。荒木さん、他に何か必要なものはありますか?」
話しながら、部屋を一瞥した。
「ありません、これから休むつもりです」工藤みやびはそう言いながら、あくびをした。
「お早めにお休みください。おやすみなさい」プライベートハウスキーパーは軽く頭を下げ、彼女の部屋を出て行った。
工藤みやびはドアに鍵をかけてから、クローゼットを開けた。
「ここは安全じゃないわ、早く行って」
プライベートハウスキーパーはバスルームの配管をチェックしに来たのではなく、彼女の部屋に異常がないか見に来たのだ。
しかも、藤崎雪哉の指示で来たのだろう。
おそらく、先ほど彼との電話が急に終わったので、彼は心配して何か問題があったのではないかと思ったのだろう。