第340章 あなたと一晩過ごしてから帰る

「……」

工藤みやびは言葉を失い、彼女との会話を続けることを諦めた。

「お風呂も入ったし、お酒も飲んだし、まだ帰らないの?」

本間夢はお酒を飲み終え、伸びをして、特に妖艶な姿勢で彼女のベッドに横たわった。

「せっかく会えたんだから、一緒に寝てから帰るわ」

「師匠と寝てきなさいよ」

工藤みやびはワイングラスを洗い、本間夢が部屋に残した痕跡を片付けていた。

「藤崎雪哉の女を抱く感覚を味わわせてくれないの?」本間夢は片手で頭を支え、妖艶に不満を漏らした。

「先輩、冗談はやめて、早く本題に入りましょうよ」工藤みやびは歯を食いしばって諭した。

彼女がここにいる一分一分が、彼女にとっては気が気ではなかった。

特に明日もまた一日撮影があるのに、今夜ゆっくり休めなければ、明日の調子が悪くなるだろう。

しかし本間夢はベッドを叩きながら、にこにこと言った。

「ほら、寝よう」

二人が冗談を言い合っていると、部屋のドアベルが鳴った。

工藤みやびがベッドを見ると、本間夢はすでに素早く飛び起き、クローゼットに隠れていた。

彼女は部屋を少し片付けてから、ドアを開けた。

「荒木さん、午後に部屋を掃除した際、バスルームの蛇口に問題があったので交換に来ました。うまく直っているか確認させてください」

「ありがとう」工藤みやびは横に身をよけ、人を中に入れた。

プライベートハウスキーパーはバスルームをチェックし、出てきて言った。

「もう問題ありません。荒木さん、他に何か必要なものはありますか?」

話しながら、部屋を一瞥した。

「ありません、これから休むつもりです」工藤みやびはそう言いながら、あくびをした。

「お早めにお休みください。おやすみなさい」プライベートハウスキーパーは軽く頭を下げ、彼女の部屋を出て行った。

工藤みやびはドアに鍵をかけてから、クローゼットを開けた。

「ここは安全じゃないわ、早く行って」

プライベートハウスキーパーはバスルームの配管をチェックしに来たのではなく、彼女の部屋に異常がないか見に来たのだ。

しかも、藤崎雪哉の指示で来たのだろう。

おそらく、先ほど彼との電話が急に終わったので、彼は心配して何か問題があったのではないかと思ったのだろう。