工藤みやびはワイングラスを持つ手が少し震え、深呼吸をして、グラスの中のワインを一気に飲み干した。口の中に冷たく渋い味が広がった。
本間夢は彼女が何か質問してくるだろうと思っていたが、しばらく待っても何も聞いてこなかった。
「あれは、あなたがお父さんの消息を追って亜蘭国を離れた年のことよ。当時は誰の子供なのか知らなかったけど、今となってはすべて言わずもがなね。」
工藤司は彼女の心臓を使って堀夏縁を救い、さらに堀夏縁を工藤家に住まわせて丁寧に世話をした。
そうなると、堀夏縁のその子供の実の父親は、工藤司以外に考えられなかった。
工藤みやびは手を伸ばしてワインボトルを取り、自分でもう一杯注いだ。
あの年、出発する前に堀夏縁と食事をした時、彼女は気分が悪くなって吐いたが、ただ胃腸の調子が悪いと言っただけだった。おそらくその頃には既に子供がお腹にいたのだろう。