風邪で熱を出したため、工藤みやびはホテルで一日休養し、藤崎雪哉も一日彼女の看病に来ていた。
翌朝早く、彼女は撮影に戻る準備をしていた。藤崎雪哉は彼女を説得できず、彼女の携帯電話でマネージャーの石橋林人を呼び寄せた。
石橋林人は大ボスの呼び出しを聞いて、歯も磨き終わらないうちに階段を駆け上がってきた。
「社長、何かご用でしょうか?」
工藤みやびは石橋林人の口元の歯磨き粉の泡を見て、ティッシュを一枚取り出して渡した。
「口を拭いてくれない?」
石橋林人はようやく気づいた。自分はまだ歯を磨き終わっておらず、手には歯ブラシを持ったままで上がってきていたのだ。
そこで、急いでティッシュを受け取り、口元の歯磨き粉の泡を拭き取った。
藤崎雪哉はテーブルの上の一堆の物を指さし、厳しい表情で指示した。