第377章 藤崎雪哉のための独奏

工藤みやびは周囲を一瞥し、小声で言った。

「最近、藤崎雪哉がいるから、あまり都合がよくないの」

昼間は撮影があり、撮影現場には大勢の人や記者がいて、夜は藤崎雪哉がほぼ毎晩ここに泊まっているため、彼女と連絡を取る機会がなかった。

本間夢は自分の付けた小さな口ひげを触り、「どう?私の男装、リアルでしょ?」

工藤みやびは彼女を見回して、「確かにそっくりね。ここでは話しづらいから、別の時間に会いましょう」

「今夜は?」本間夢は尋ねた。

「今夜はダメ、藤崎雪哉が来るから」工藤みやびは言った。

彼がいない時でさえ外出するのに苦労するのに、彼がいる時に外に出て彼女に会うなんて、さらに不可能だった。

「じゃあ、いつになるの?」

本間夢は胸に手を当て、不満を漏らした。「胸が大きすぎて、男装すると締め付けられて痛いのよ。長く待てないわ」