『追跡の眼』の撮影はもう終盤に差し掛かり、工藤みやびと藤崎雪哉は相変わらず毎晩電話で連絡を取り合っていた。
彼女は全く知らなかったが、帝都では彼女と本間夢が会った件について緊急に調査が進められていた。
映画の撮影が終わるとすぐに、彼女は帰って他の仕事の予定があった。
そのため、彼女は監督と男性主役の辻鈴之介を演じる坂口飛羽と相談し、自分のシーンを先に撮り終え、早めにクランクアップした。
その日の夜、撮影クルーと食事会をした後、荷物をまとめて夜行便で帝都に戻る準備をした。
石橋林人は彼女が急いで帰りたがる様子を見て、不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「仕事を言い訳にしてるけど、要するに帰って社長と恋愛したいだけでしょ?」
帰ってから仕事の予定はあったが、撮影が終わった当日に帰っても間に合うはずだった。