第432章 藤崎雪哉に来てキスをしてもらう

彼は彼女が既に彼氏ができたことを予想していたが、まさか彼女の彼氏がこんな大物だとは夢にも思わなかった。

「藤、藤崎さん、私はみやびにお別れを言いに来ました。」

男性は浴衣姿で、その表情には満足感と怠惰さが漂い、昨夜二人の密会がどれほど艶やかだったかが想像できた。

「彼女に伝えてください。私は先にミラノに戻ります。来月のMG新製品発表会にミラノに来るよう彼女を招待します。」

「わかりました。」藤崎雪哉は頷いた。

マーティン・グリーンが去り、ドアが閉まる音を聞いた後、彼はもう一度振り返って見た。

以前、彼はなぜメリンがわざわざパリから遠路はるばる彼女を探しに来て、自分と彼女を奪い合おうとしたのか不思議に思っていた。

どうやら、彼は工藤みやびが藤崎雪哉の彼女だと知っていて、わざと手助けに来たようだ。

マーティン・グリーンが去った後、工藤みやびはさらに2時間眠り、ようやく元気に起き上がった。

そして、藤崎雪哉が窓際に立って電話をしているのを見た。窓から差し込む陽光が彼の体に当たり、まるで金色の輝きを纏った神のようだった。

彼女は枕を抱きながらベッドに伏せて、うっとりと彼を見つめていた。

藤崎雪哉は振り返って一瞥し、電話を終えた後近づいて尋ねた。

「今日もどこかに出かけるの？」

工藤みやびは少し考えて、「時間ある？行きたい場所があるんだけど、一緒に行ってほしいの。」

藤崎雪哉：「いいよ。」

工藤みやびは携帯電話を手に取り、石橋林人に状況を説明してから、自分で起きて洗面し、服を着替えた。

それから藤崎雪哉と外出し、食事をする場所を探した。

ベネチアのカーニバルは数日間続くため、外はまだ祝祭の熱気に包まれた人々でいっぱいだった。

海外では、国内でのデートのようにこそこそする必要はなく、二人は観光客のようにベネチアの路地をゆっくりと歩き、途中でマスク市場を通り過ぎた。

彼女は男性用のマスクを買い、階段の上で藤崎雪哉にそれをつけさせた。

「これで隠せたわ。これで道行く女性たちがあなたを見つめることもないでしょう！」

ここまで歩いてきて、彼の花を招く妖艶な顔は、どれだけ多くの女性の視線を引きつけたことか。

藤崎雪哉は別のマスクを取り上げ、彼女の顔も隠した。

「これで公平だ。」

マスクの後ろの工藤みやびは、眉を弓なりに笑った。