「でも……」
藤崎千颯は本間壮佑を見て、それから自分の兄を見て小声で言った。
「彼は以前工藤家の手伝いをしていたんだ。彼が今本当に助けに来たのか、それとも私たちを騙しに来たのか、誰にわかるの?」
お義姉さんを救出するという重要な任務を、初めて会った人に任せるなんて、兄さんの心はどれだけ大きいんだろう?
「お前は、会社の仕事をきちんと処理して、いつも通りにしていればいい」
藤崎雪哉は彼を一瞥し、振り向いて岡崎謙に三浦大也と連絡を取るよう指示した。
確かに相手は初めて彼を訪ねてきたが、彼が亜蘭国から逃げ出したのは事実だ。
彼女があれほど口を閉ざし、それでも彼らに会いたがり、彼らを信頼していることを示している。
それに、彼の妻が工藤家の近くに潜入してこのビデオを撮影できたことは、彼らが本気で人を救いたいと思っていることの十分な証拠だ。