ランウェイの上で、工藤みやびは山内美見から教わったすべてを心に留め、トリを飾るショーに集中していた。
歩きながら、ふと群衆の中から異様な視線を感じた。
さっと周囲を見渡すと、不意に工藤司の深く鋭い眼差しと目が合った。
ほんの一瞬だけ動揺したが、すぐに視線をそらした。
そして、自然な笑顔でランウェイの端まで歩き、ポーズを決め、身軽に踵を返した。
工藤司はランウェイ上で近づいてくる人物を見つめ、心の中に言いようのない思いが湧き上がり、薄い唇も鋭い線を描いていた。
「司兄さん?」
堀夏縁は彼を二度呼んでも反応がなく、手を伸ばして彼の腕を引っ張った。
しかし、工藤司はまだランウェイ上の人物をじっと見つめ、まるで遠い記憶に浸っているかのように、自分がどこにいるのかも完全に忘れていた。
工藤みやびは広告塔としてトリを務め終え、バックステージに戻った後、マーティン・グリーンと一緒に再び舞台に上がって挨拶した。
彼女と山内美見はマーティンの左右に立ち、マーティンは短いスピーチをした。
そして、観客に彼女と山内美見の二人の広告塔を紹介した。
彼女はモデルたちと一緒に拍手し、微笑みながらマーティンに祝福の言葉を述べた。
ただ、始終客席にいる工藤司の視線が、彼女をとても不快にさせていた。
MGの新作発表ショーが終わり、工藤みやびと山内美見はショーに参加したモデルたちと一緒にランウェイを通ってバックステージへと戻っていった。
彼女は気づかなかったが、彼女たちがバックステージに戻るのと同時に。
工藤司も観客席から立ち上がり、出口に向かう人々の流れに逆らって、バックステージへと追いかけていった。
「司兄さん、どこに行くの?」
工藤司は彼を引き止める堀夏縁の手を振り払い、素早く群衆をかき分け、急いでバックステージへと向かった。
ショーのバックステージでは、モデルたちが着替えに忙しく、いくつかの更衣室は満員だった。
工藤みやびは着替える場所がなく、山内美見とマーティン・グリーンと一緒に立って話をしていた。
「さっきの演技は素晴らしかった、少しも期待を裏切らなかったよ」マーティンは喜んで褒めた。
「山内さんの教え方が良かったからです」工藤みやびは隣の背の高い山内美見を見た。
「彼女自身が飲み込みが早いのよ」山内美見は微笑み返した。