藤崎雪哉はまず居間に座っている藤崎千明を見て、彼の目に隠しきれない幸災楽禍の色を見つけた。
「お前が連れてきたのか?」
藤崎千明は無実そうな顔で首を振り、キッチンの方にいる藤崎奥様を指さした。
「お母さんが連れてきたんだよ」
やはり、可愛さこそ最強だ。
福くんが一度出てくれば、彼の兄も脇に追いやられる。
うん、これからは頻繁に福くんを借りて兄を対処しなければ。
藤崎奥様は使用人に指示を終え、こちらに来て言った。
「スープを煮込んでもらったから、夜には飲むように」
藤崎千明はにやりと笑った。「兄さん、滋養強壮のやつだから、たくさん飲んでね」
藤崎雪哉は冷たく一瞥して言った。「そんなに暇なら、会社に戻るか?」
「暇じゃないよ、最近は映画の準備で、一時的に帝都にいるだけだ」藤崎千明は弁解した。