藤崎雪哉はまず居間に座っている藤崎千明を見て、彼の目に隠しきれない幸災楽禍の色を見つけた。
「お前が連れてきたのか?」
藤崎千明は無実そうな顔で首を振り、キッチンの方にいる藤崎奥様を指さした。
「お母さんが連れてきたんだよ」
やはり、可愛さこそ最強だ。
福くんが一度出てくれば、彼の兄も脇に追いやられる。
うん、これからは頻繁に福くんを借りて兄を対処しなければ。
藤崎奥様は使用人に指示を終え、こちらに来て言った。
「スープを煮込んでもらったから、夜には飲むように」
藤崎千明はにやりと笑った。「兄さん、滋養強壮のやつだから、たくさん飲んでね」
藤崎雪哉は冷たく一瞥して言った。「そんなに暇なら、会社に戻るか?」
「暇じゃないよ、最近は映画の準備で、一時的に帝都にいるだけだ」藤崎千明は弁解した。
主に、福くんという究極の武器を発見したからこそ、兄に対抗できる。
だから、今はどこにも行きたくなく、ただ福くんが兄を何度もKOする様子を見ていたかった。
藤崎奥様が近づいてきて、工藤みやびが福くんに好かれていて、しかも細やかに世話をしているのを見た。
そのため、見れば見るほど満足し、見れば見るほど気に入った。
彼女も子供が好きなようだし、結婚したら、自分の孫もそう遠くない将来に来るだろう。
藤崎雪哉は藤崎奥様の視線を見て、すでに彼女の考えを察し、不機嫌に眉をひそめた。
「この子が好きなら、家に連れて行って、こっちには連れてこないでくれ」
「福くんは雅に会いたがっているのに、来させないの?」藤崎奥様は尋ねた。
こんなに可愛い子が、何も悪いことをしていないのに、彼は一体何が不満なの?
藤崎雪哉は福くんをあやすことに夢中な女の子を一瞥し、胸がもやもやした。
この小さな存在が来ると、彼女の彼への関心は、彼女のボーイフレンドとしての彼への関心よりもはるかに少なくなる。
「子供は彼らに任せて、お前はコンテを描きなさい」
工藤みやびは振り向きもせず、福くんにキャンディーの包みを剥いてあげた。
「映画はそんなに急いでないわ」
藤崎千明は横で笑いを堪えていた。おっと、兄さんもこんな日が来るとは。
毎日彼らにイチャイチャされて、今は福くんがいるから、彼も冷遇されるんだ。