第506章 福くん再び勝利

天水ヴィラ、午後。

工藤みやびは石橋林人に電話をかけ、彼と助手の岡崎の近況、そして自分の仕事のスケジュールについて尋ねた。

石橋林人:「この数日間、君はずっと行方不明状態だったから、仕事の予定は入れていないんだ。しばらくはゆっくり休んで、予定が入ったら連絡するよ。」

彼は彼女に仕事を入れたいと思っていたが、三の若様が朝早く会社に来て、彼女が社長と生き別れになりかけたから、二人にしっかり再会の時間を与えるべきだと言ったのだ。

どうせ、彼女は女優になるのも遊びでやっているだけで、お金を稼ぐためではないのだから。

「わかったわ、対外的な広報は頼むわね。」工藤みやびは念を押した。

彼女がこれだけの日数行方不明になっていたのだから、ファンやメディアはきっといろいろと憶測を立てているだろう。

石橋林人との通話を終え、藤崎雪哉が海外のパートナーと電話で話しているのを見た。

そこで、書斎で作家の千葉秀豊から送られてきた新しい脚本を印刷し、紙とペンを取ってコンテの構想を練り始めた。

良い映画には、良い脚本と良い俳優の他に、監督による優れたコンテ設計が必要だ。

コンテの良し悪しが、撮影される画面の美しさや、映画全体の出来を左右するからだ。

藤崎雪哉は電話を切ると、彼女の傍らに来て一瞥し、自分のデスクに戻って自分の仕事に取り掛かった。

工藤みやびは時々仕事に忙しい男性を見つめ、そうしているうちに手元のコンテ設計は藤崎雪哉の簡単なスケッチに変わっていった。

描き終えると、宝物を見せるかのように彼のところへ持っていった。

藤崎雪哉は退屈な書類から目を離し、彼女が描いた簡単な肖像画を手に取って見た。

プロの画家のように精密ではないが、特に愛らしくて面白い絵だった。

絵の下には、優美な英文が一行書かれていた。

[my feelings for you no words can tell.]

あなたへの私の深い気持ちは、言葉では表せない。

「とても面白いね。」

「気に入った?」工藤みやびは笑顔で尋ねた。

藤崎雪哉の眉と目に笑みが広がった。「とても気に入ったよ。」

彼女から贈られるものなら、何でも好きになるだろう。

工藤みやびは美しい眉を少し上げた。「お礼はないの?」

藤崎雪哉は手を伸ばして彼女を抱き寄せ、深く口づけた。