病院から天水ヴィラに戻る途中、工藤みやびは藤崎雪哉に電話をかけた。
「帰ってきたの?」
「うん、今道中だけど、ひとつ相談があるんだけど...いいかな?」工藤みやびは探るように尋ねた。
藤崎雪哉:「何の話?」
工藤みやびは取り入るように笑いながら、「本間壮佑の古傷は手術が必要で、本間夢も病院に残って看病しないといけないから、私...福くんを一時的に引き取ってもいい?」
この数日間、ずっと本邸で藤崎奥様たちに面倒を見てもらっていると聞いた。
でも、ずっと彼らに任せておくのは、考えてみればあまり適切ではない。
藤崎雪哉は聞き終わると、考えもせずに言った。
「この件は、相談する必要はない。彼は本邸でとても良く過ごしているはずだ」
やっと二人だけの時間ができたというのに、小さな子供を連れ帰って二人の世界を邪魔されるなんて。
特に、あの小さな子は彼女を見るとすぐに「お嫁さん」と呼んでくっついてくる。
「ずっとあなたの両親のところに置いておくのは、あまり適切じゃないわ」と工藤みやびは言った。
「引き取りたいと言っても、彼らが許すかどうかわからないよ」と藤崎雪哉は言った。
彼らは最近、祖父母として子育てにはまっているから、簡単に子供を連れ去らせるわけがない。
「時間があれば会いに行ってもいいけど、引き取るのはダメだ」藤崎雪哉は全く妥協の余地を見せなかった。
うん、本間家の人たちを藤崎家に留めておくにしても、子供を連れて彼らから離れて住んでもらわないと。
工藤みやびは彼の口調を聞いて、福くんを迎えに行く計画を諦め、直接天水ヴィラに戻ることにした。
同時に、藤崎家の本邸では。
藤崎千明は風蘭国での滞在中にあまり休めなかったため、近日の予定をすべてキャンセルして家に居座っていた。
朝、千秋芸能に行って仕事の指示を出し、帰ってきてからはたくさんのお菓子とおもちゃを買って、福くんの前に置いた。
「福くん、お嫁さんに会いたい?」
福くんはそれを聞くと、丸い大きな目を輝かせ、何度もうなずいた。
「連れてって!」
藤崎千明は床に座り、彼におもちゃを渡しながら小声で言った。
「おじさんは忙しいから連れて行けないよ。藤崎お婆さんに頼んで連れて行ってもらおう」
彼らは長年対立してきたが、実の兄とは対立したことがなかった。