第531章 あなたは美人計に引っかかった

工藤みやびは表情を平静に保ち、驚きもなければ怒りの色も見せなかった。

結局、もし本当にアンダーソン家の人間だったとしたら、最初から彼らに近づいた目的は単純なものではなかったはずだ。

当時は気づかなかったが、今思い返してみると、本間夢と一緒にいた様々な出来事には、怪しい点もあった。

しかし彼女も分かっていた。本間夢の腕前なら、二人きりの時に彼女を殺そうと思えば、いとも簡単にできたはずだ。

結局のところ、あの頃は彼女と一緒に遊びに出かけることも多く、何度も手を下す機会があったのだから。

本間壮佑は彼女が驚きも怒りも見せないのを見て、話を続けた。

「俺がドランス家の一員だということは秘密にしていたが、それでもアンダーソン家の人間に知られてしまった。だから本間夢を送り込んで俺に近づかせ、俺が亜蘭国で何をしているのか調査させた。そして...彼女はお前の存在を知ることになった」