第530章 藤崎雪哉、怖いか?

病室には本間壮佑だけがベッドに横たわり、表情は少し憂鬱そうだった。

工藤みやびは福くんの手を引いて入ってくると、小さな子供はベッドに駆け寄った。

「パパ、福くんは毎日とっても良い子だよ。」

「福くんは自分でにんじんも食べたよ。」

「福くんはパパにおいしいものを持ってきたよ。」

……

小さな子供はそう言いながら、一生懸命に自分のクマのリュックを脱ごうとして、お父さんに食べ物を取り出そうとしていた。

本間壮佑は可愛らしくて素直な子供を見て、手を伸ばして柔らかい髪を撫でた。

「うん、福くんはいい子だね。」

福くんはリュックを脱ぎ、自分のお菓子をベッドの上に出して、一つ一つ手に取った。

「これはパパの、これはママの、これは奥さんの、これは福くんの。」

工藤みやびは本間壮佑の心配そうな様子を見て、尋ねた。

「先輩は?」

本間壮佑はしばらく黙った後、「行ってしまった」と言った。

工藤みやびは彼の表情を見て、この「行ってしまった」が単に外出したという意味ではないことは明らかだった。

彼女は福くんと一緒にしばらくそこで待ち、それから池田輝にメッセージを送って来てもらった。

池田輝が来るとすぐに、熱心に福くんを抱き上げた。

「福くん、奥さんの家は楽しかった?」

藤崎千颯がグループチャットで、彼の兄が目の下にクマを作って出勤し、機嫌が悪そうだと言っていた。

想像できるように、昨日は福くんがそこにいたせいで、かなりのストレスを受けたに違いない。

福くんは力強くうなずいた。「楽しかった、でも叔父さんが悪い。」

池田輝はそれを聞いて、大笑いした。

この「悪い叔父さん」が藤崎雪哉を指していることは明らかだった。

「池田くん、福くんを連れて少し外で遊んでくれない?」と工藤みやびは言った。

池田輝は福くんを抱いて病室を出ながら、小さな子供に教えていた。

「福くん、奥さんをしっかり見ていないと、あの悪い叔父さんに奪われちゃうよ、わかる?」

「いやだ、ぼくの、奥さんはぼくのだよ。」福くんは言った。

池田輝:「僕も知ってるよ、でもあの悪い叔父さんは君の奥さんを奪おうとするんだ。」

「いやだ、ぼくの奥さんだよ。」福くんは断固として言った。

池田輝:「だから帰ったら、奥さんをしっかり見ていて、絶対に奪われないようにね。」