書斎の中は、静かな温かさに包まれていた。
突然、主寝室の方から子供の泣き声が聞こえ、工藤みやびは藤崎雪哉から手を離した。
「福くんが起きたわ」
藤崎雪哉は薄い唇を軽く噛み、横を向くと福くんが裸足で、涙目で泣きながら書斎に走ってくるのが見えた。
「奥さん、いなくなって、福くん怖かった……」
工藤みやびは急いで悲しそうに泣いている福くんを抱き上げ、一方で彼の背中を軽くトントンと叩きながら、もう一方では座ったまま次第に顔色が暗くなっていく男性を見た。
「私が先に彼を寝かしつけに行った方がいい?」
藤崎雪哉は先ほどまで愛情たっぷりに自分を抱きしめていた彼女が、今度はその小さな子供を抱きしめているのを見て、胸の中で怒りを感じたが、それを表に出すことはできなかった。
「行っていいよ」
工藤みやびは肩で啜り泣いている福くんを抱いて書斎を出て、寝室に戻って彼を再び寝かしつけた。
しかし、先ほど三浦大也と藤崎雪哉から聞いたすべてのことを思い出すと、また眠れなくなった。
藤崎雪哉は仕事を終えて寝室に戻ると、彼女がまだ眠っていないことに気づいた。
彼女がまだ本間壮佑たちのことを心配しているのだろうと思い、尋ねた。
「明日、病院に行くの?」
彼は彼女がなぜあの二人が関与していないと確信しているのか分からなかったが、彼女の性格からすれば、彼らに会って真相を確かめるだろうと思った。
「ここでいろいろ推測するよりも、直接彼らに会って確かめた方がいいわ」と工藤みやびは言った。
藤崎雪哉はシャワーを浴びてパジャマに着替えて出てきて、横になり習慣的に彼女を抱きしめようとしたが、二人の間に福くんが寝ていることに気づいた。
「彼と場所を変えられない?」
「彼が端で寝ると、ベッドから落ちてしまうわ」と工藤みやびは言った。
藤崎雪哉は福くんを挟んで彼女を見た。「じゃあ、俺はどうやって寝ればいいんだ?」
「今までどうやって寝てたの?そのまま寝ればいいじゃない」と工藤みやびは笑いながら言った。
なんだ、彼女という人間の抱き枕がないと眠れないのか。
彼女が家にいない時は、彼は眠らないつもりなのだろうか?
藤崎雪哉は深くため息をついた。幸い、これは自分の家ではないから、数日後には送り出せる。
一晩中、工藤みやびは本間壮佑と本間夢のことを考えて眠れなかった。