「藤崎奥様……」大島蓮美は藤崎奥様が本当に手のひらを返したように態度を変えるとは思わなかった。
しかし、藤崎奥様はすでに振り返って本邸に戻ってしまった。
石橋林人は他人の不幸を喜ぶように笑いながら近づいて言った。
「丸山奥様、丸山さん、この車の衝突の賠償は……」
「あなたの所属タレントが若くて綺麗だからって藤崎雪哉を誘惑して、本当に藤崎家に入れると思わないでよ。結婚もまだなのに、この藤崎夫人になれるかどうかもわからないんだから」
大島蓮美は藤崎奥様に怒りをぶつける勇気はなかったが、石橋林人のようなマネージャーに対しては遠慮する必要がなかった。
「そうですか、後ほど私の所属タレントにお伝えしておきます」石橋林人はわざとそう言った。
今は彼の所属タレントが藤崎家に嫁ぎたがっているのではなく、大社長が彼女を娶りたがっているのだ。