第518章 私は娘の心臓を取り戻すだけだ

こんな言葉に、そこに跪いていた堀夏縁は恐怖で震えた。

「返す...返すって?」

心臓はすでに彼女の体に移植されているのに、どうやって返せというのだろう?

工藤奥様も驚いて、急いで諭した。

「ドランスさん、あなたの今のお気持ちは理解できますが、しかし...」

堀夏縁はすでにみやびの心臓を移植されている。それを返せというのは、人命を奪うことではないか?

「いいえ、あなたには理解できない」カーマン・ドランスは冷たい声で工藤奥様の言葉を遮った。

二十年以上会っていなかった娘が、彼の前に現れたときにはすでに死んでいた。

そして、彼女の心臓は摘出され、他人に移植されていた。

誰が理解できるだろうか、彼の今の骨身に染みる痛みを。

工藤奥様は黙った。確かに彼の気持ちは理解できないかもしれない。