第518章 私は娘の心臓を取り戻すだけだ

こんな言葉に、そこに跪いていた堀夏縁は恐怖で震えた。

「返す...返すって?」

心臓はすでに彼女の体に移植されているのに、どうやって返せというのだろう?

工藤奥様も驚いて、急いで諭した。

「ドランスさん、あなたの今のお気持ちは理解できますが、しかし...」

堀夏縁はすでにみやびの心臓を移植されている。それを返せというのは、人命を奪うことではないか?

「いいえ、あなたには理解できない」カーマン・ドランスは冷たい声で工藤奥様の言葉を遮った。

二十年以上会っていなかった娘が、彼の前に現れたときにはすでに死んでいた。

そして、彼女の心臓は摘出され、他人に移植されていた。

誰が理解できるだろうか、彼の今の骨身に染みる痛みを。

工藤奥様は黙った。確かに彼の気持ちは理解できないかもしれない。

しかし、みやびも彼女が育てた子だった。一歳の時から工藤家に送られ、実の娘のように育てたのだ。

彼女の死に、どうして心を痛めないことがあろうか。

ただ、人はもういない。生きている者はやはり生き続けなければならない。

「おじさま、みやびを失った悲しみはわかります。これは彼女の心臓です。あなたがこんなに悲しんでいるのを見て、この心臓も悲しんでいます...」

堀夏縁は胸に手を当て、声を詰まらせながら言った。

カーマン・ドランスは彼女を見つめ、冷たい目の奥に複雑な感情が浮かんだ。

堀夏縁は恐る恐る彼を見て、続けた。

「みやびはもういません。でも私は彼女の心臓と共に、彼女の代わりにあなたの面倒を見て、あなたに寄り添い、娘としてできることすべてを...」

彼女はやっとこの心臓を得て生き延びたのだ。死にたくはない。

工藤奥様は堀夏縁を見て、一瞬感動した。

彼女の体に移植されたこの心臓は、本当にみやびの気持ちを感じることができるのだろうか?

「彼女の代わり?」カーマン・ドランスは冷ややかに笑い、きっぱりと言った。「あなたに彼女の代わりはできない。誰にもできない...」

「わかっています、わかっています」堀夏縁は泣きながら頷き、涙ながらに言った。「みやびはずっとあなたを探していました。彼女はあなたに会えなかった。私はただ...彼女のために何かをしたいだけです。たとえ少しでも親孝行を...」