二人が話している最中、部屋のドアが外から開き、金髪で体格の良い外国人男性が部屋に入ってきた。
「紗世ちゃん、いけない子だね、また抜け出して...」
本間夢は腰の後ろに差していた銃を取り出し、弾をチャンバーに装填して来訪者に向けた。
「くそっ、もう一度そんな気持ち悪い呼び方したら、ぶち殺すぞ」
「……」工藤みやびは本間夢を見て、それから部屋に飛び込んできた金髪の男を見た。
おそらく、これが彼女の言っていた、毎日彼女を口説こうとする外国人だろう。
紗世ちゃん?
確か藤崎雪哉から聞いたことがある、本間夢の本名は河村紗世で、本間夢という名前は本間家に来てから変えたものだと。
金髪の男は両手を挙げて降参のポーズをとり、本間夢と一緒に座っている工藤みやびに気づくと、すぐに友好的に挨拶した。
「やあ、こんにちは。僕は紗世ちゃんの婚約者、アレックス・アンダーソンです」
「婚約者?!」工藤みやびは驚いて本間夢を見た。
彼女の息子はもう3歳なのに、どこから婚約者が出てきたの?
「くそっ、もう一度『婚約者』なんて言ったら、頭に穴を開けてやるぞ」本間夢は怒って警告した。
工藤みやび:「あの...婚約者ってどういうこと?」
「この外国人が以前プロポーズしてきたけど、私は承諾しなかった」本間夢は冷静に言った。
それに、これは全て本間家に行く前の話だった。
工藤みやびは考え深げにアレックス・アンダーソンを観察した。どうやらアンダーソン家の後継者のようだ。
本間夢と彼の関係がこれほど近いなら、アンダーソン家では何も不自由していなかったのだろう。
「でも僕はプロポーズしたんだから、君は僕の婚約者だよ」アレックス・アンダーソンは拙い中国語で主張した。
「私には男も子供もいるんだ」本間夢は歯を食いしばって、何度も繰り返してきた言葉を言った。
しかし、アレックス・アンダーソンは笑いながら言った。
「言ったでしょう、彼らの存在は気にしないよ。一緒に暮らしても構わない」
本間夢は銃を持ち、引き金を引きたい衝動を必死に抑えていた。
「私の男まで口説くつもりか?」
もしアンダーソンじいさんが彼女を救ってくれなかったら、そして彼がたまたまアンダーソン姓でなかったら、彼はとっくに何度も彼女の手で死んでいただろう。