工藤みやびはホテルで本間夢とアレックス・アンダーソンに別れを告げ、急いで荷物をまとめて空港へ向かった。
深夜のフライトでパリへ行き、明日メリンと結婚式のドレスデザインの細部について相談する予定だった。
彼女が空港で待機している間、長い間静かだった小グループのWeChatグループが突然賑やかになった。
藤崎千明:[こんな顔立ち、こんな雰囲気、こんな財力を持つ俺が、お見合いの場で需要がないだって?]
藤崎千颯:[それは当然だろ、お前が本当に誰からも愛され、花が咲くように魅力的だと思ってるのか?]
池田輝:[おやおや、お見合いで振られたのか!]
……
工藤みやびが帝都を離れてイタリアに到着した日、藤崎千明は特別に早起きして会社に行き、スタイリングディレクターに超カッコいいスタイリングをしてもらった。
さらに、わざわざアイラインまで引いてもらった。
そして、約束通りお見合い相手との待ち合わせ場所へ向かった。
ただ、相手が指定した場所は喫茶店ではなく、AFRアジアフォーミュラレーシングシリーズの日本大会の会場だった。
ちょうど藤崎千明もレースカーやスポーツカーが好きな人間で、仕事の関係でこういった試合を観戦する機会がなかったので、今日はちょうど良い機会だと思った。
彼とお見合い相手が待ち合わせた場所は視界が良く、コース上のレースをよく観ることができた。
ただ、レースが始まると彼は熱くなりすぎて、自分がお見合いに来たことをすっかり忘れてしまった。
レースは非常に白熱していて、彼が応援していた17号は第8周回で2人に抜かれ、ずっと守りの姿勢で反撃できず、彼は声が枯れるほど叫んでいた。
ついに、17号は第13周回でインサイドを取り、チャンスを窺って追い抜き、このラウンドの優勝を勝ち取った。
彼は17号の車がフィニッシュラインに向かうのを見て、興奮と安堵で腰に手を当てて笑った。
レースが終わり、すべてのドライバーが出てきて、17号のドライバーがヘルメットを脱いだとき、女性ドライバーだということに気づいた。
しかも、会場で唯一の女性ドライバーだった。
「うわ、こんなにカッコいいなんて?」
レース界では女性ドライバーは珍しく、しかもこれほど技術が素晴らしい女性ドライバーは特に珍しかった。